
顕微授精(ICSI)を予定しているご夫婦から、
「採卵の日に向けて精子は2〜3日ためた方がいいですか?」
「毎日射精すると精子が減ってしまいませんか?」
という質問をいただくことがあります。
実は近年の生殖医療では、
「精子の数」よりも「精子の質」
を重視する考え方が広がっています。
今回は顕微授精と精子の質について解説します。
顕微授精は精子の数が必要ない治療
自然妊娠や人工授精では、
- 精子の数
- 運動率
- 精液量
が重要になります。
しかし顕微授精では、
培養士が良好な精子を選び、
卵子に直接注入します。
つまり、
極端な話をすると、
何千万匹もの精子は必要ありません。
必要なのは、
質の良い精子です。
精子は長くためると質が低下する可能性がある
精子は精巣で作られた後、
精巣上体という場所で保管されます。
しかし長期間とどまると、
活性酸素の影響を受けやすくなり、
- DNA損傷
- 運動率低下
- 精子老化
が起こる可能性があります。
近年は、
精子のDNA損傷率(DFI)が
顕微授精の結果にも影響することが知られています。
顕微授精で重要なDNA断片化率
顕微授精では、
見た目が良い精子を選ぶことはできます。
しかし、
DNAの傷までは顕微鏡で確認できません。
そのため、
見た目は良くても
DNA損傷が多い精子が選ばれる可能性があります。
DNA断片化率が高いと、
- 受精率低下
- 胚盤胞到達率低下
- 着床率低下
- 流産率上昇
との関連が報告されています。
実は「短い禁欲期間」が注目されている
以前は、
「2〜3日ためる」
ことが一般的でした。
しかし最近では、
禁欲期間を短くした方が
DNA損傷率が改善する可能性が報告されています。
特に、
- 精液所見が悪い
- 40歳以上
- 精索静脈瘤がある
- 胚盤胞になりにくい
ケースでは、
毎日〜1日おきの射精が勧められることもあります。
採卵前の連続射精を指導する施設もある
最近では一部の生殖医療施設で、
採卵前に
- 毎日射精
- 1日おきの射精
を指導することがあります。
理由は、
古い精子をため込まず、
より新鮮な精子を採取するためです。
実際に、
禁欲期間を短くしたことで
- 運動率改善
- DNA損傷率改善
がみられた報告もあります。
「2〜3日禁欲」が間違いというわけではない
ここで大切なのは、
病院の指導を否定することではありません。
WHOでは精液検査の基準として
2〜7日の禁欲期間を採用しています。
そのため現在も多くの施設では
2〜3日禁欲を推奨しています。
ただし、
それは主に
精子数を確保するための考え方
です。
顕微授精では、
数より質が重要になるため、
最近は別の考え方も出てきています。
東洋医学から考える精子の質
顕微授精では、
卵子だけでなく精子の状態も非常に重要です。
東洋医学では、
生殖機能は「腎」の働きと深く関係すると考えます。
また、
- 睡眠不足
- ストレス
- 冷え
- 過労
- 自律神経の乱れ
は精子の質にも影響すると考えられています。
鍼灸治療では、
身体全体のバランスを整えながら、
妊娠しやすい身体づくりをサポートしていきます。
まとめ
顕微授精では、
大量の精子よりも
DNA損傷の少ない質の良い精子
が重要です。
そのため近年は、
「2〜3日ためる」よりも、
毎日〜1日おきに射精して新鮮な精子を保つ
という考え方が注目されています。
もちろん全ての方に当てはまるわけではありませんが、
特に
- 胚盤胞になりにくい
- 顕微授精を繰り返している
- 男性年齢が高い
- 精液所見に問題がある
という方は、
一度担当医と相談してみる価値があるかもしれません。
