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地域で妊娠率は変わる?—日本・海外データで読む“季節・緯度・環境”の影響

地域によって妊娠率に差は出る?国内外のエビデンスまとめ 結論(先に要点)

  • 自然妊娠(妊孕性:fecundability)は地域・緯度・季節差の影響を受ける傾向があるという大規模研究がある(北米・デンマークの前向きコホート)。特に低緯度(南側)で季節差が強く、秋に妊孕性がやや高いという結果。
  • ART(体外受精など)の妊娠率は「季節・気温の影響あり」とする研究と「差はほぼなし」とする研究が併存。施設・地域・プロトコルにより結果が揺れる。
  • 地域環境(大気汚染など)による影響は比較的一致したシグナルがあり、PM2.5などの曝露はIVFでの臨床妊娠率・生児獲得率を下げるとのメタ解析・レビューが出ている。
  • 日本でも「出生の季節性」や「早産の季節性」に都道府県レベルの違いが報告されており、気候・生活様式・婚姻季節性など地域要因が妊娠・出産のタイミングに関与することが示唆される。

1) 自然妊娠:緯度・季節と妊孕性の関係

北米とデンマークの計1.4万人超を追跡した前向きコホートでは、秋に妊娠しやすく春に低下、かつ南側(低緯度)ほど季節差が強いことが示されました。日照や気温、行動パターン(性交頻度の季節差)など**「季節性暴露」の地域差**が背景要因と考察されています。

研究の含意:同じ国でも北と南で“季節による上下幅”が異なりうる。地域の気候帯が妊娠のしやすさに間接的な影響をもつ可能性。


2) 日本国内の地域差は?

日本の公的統計を用いた研究で、都道府県ごとに出生の季節性パターン(ピーク時期)が異なることが報告されています。第一子では冬(12–2月)と夏〜初秋(8–9月)にピークがみられ、婚姻の季節性との関連も指摘されました。早産の季節性にも47都道府県で差があるとの報告があります。これらは主に出生側の分析ですが、受胎時期の地域差が背後にあることを示唆します。

注意:出生データは妊娠成立から誕生までの“結果”であり、純粋な妊娠率そのものではありません。それでも地域×季節の影響が日本でも観察される点は重要です。


3) ART(体外受精など):地域・季節・気温は効く?

  • 影響あり派:多施設データで春・夏の妊娠率が冬より高い採卵時の外気温が高いほど臨床妊娠率が上がるなどの報告。気温と妊娠確率の非線形関係(長期法で26–30℃付近が上がりやすい等)も示されます。
  • 影響なし派:3万8千例超の大規模検討では季節や月ごとの差は統計的に有意でないと結論。プロトコル(新鮮/凍結)、管理環境、患者背景の違いが影響を打ち消す可能性。

まとめ:地域の気候・施設の管理環境・プロトコルの違いが交錯し、“場所ごとの結論”が変わり得る領域。


4) 地域環境要因(大気汚染など)の影響

近年は地域差の“原因”として環境曝露が注目されています。

  • メタ解析:IVF患者で大気汚染の曝露が臨床妊娠・生児獲得を低下させる関連が示される。
  • 総説・レビューPM2.5曝露は卵子数・妊娠・生児率の低下と関連。IVFは自然妊娠より汚染の影響に脆弱との指摘も。

実務的含意:同じ国内でも大気汚染(水準・季節変動)が違う地域では、妊娠転帰に差が出る可能性がある。


5) 「妊娠率の地域差」は医療アクセスや年齢構成でも変わる

英国のデータでは、地域によって不妊治療へのアクセス(物理的距離・提供体制)に格差があることが示されました。治療を受けられるかどうか自体が地域差を生みうる点にも注意が必要です。


6) クリニック視点の実践アドバイス(読者向けまとめ)

  1. 季節を味方に:自然妊娠では秋優位の傾向報告あり。ただし個人差が大きいので、タイミング法は年間を通じて継続が基本。
  2. 環境要因を整えるPM2.5の高い日や季節は屋外長時間曝露を減らす/空気清浄・換気を最適化。特に採卵前3か月は環境配慮が推奨。
  3. 体調の季節管理:睡眠・体温(冷え対策)・栄養・ストレスケアは季節変動の影響を“打ち消す”土台
  4. ARTの方へ:施設の培養環境の安定性プロトコル選択が季節差を緩和し得る。主治医と採卵・移植の時期や環境対策を相談。

参考文献(主要)

  • Wesselink AK, et al. Seasonal patterns in fecundability in North America and Denmark. Int J Epidemiol. 秋高・春低、南側で季節差が強い。 PMC
  • Liu X, et al. Seasonal variability does not impact IVF outcomes. Sci Rep 2019. 季節差は有意でない。 Nature
  • Wang C, et al. Season & temperature impact IVF pregnancy (long protocolで夏優位)。Int J Biometeorol 2025. SpringerLink
  • Qiao JC, et al. Air pollution & IVF pregnancy rate(メタ解析)。Environ Sci Pollut Res 2025. PMC
  • Li F, et al. Environmental pollution & human fertility(レビュー)。2025。 SpringerLink
  • 松田聡 他:日本の都道府県別 季節性の差(第一子の二峰性ピーク等)。 PubMed+2JSTOR+2
  • Jones B, et al. 地理的アクセス格差(英国の不妊治療)。 Taylor & Francis Online

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