
「採卵してもなかなか良い卵子が採れない」
「受精しても胚盤胞まで育たない」
「年齢とともに卵子の質が低下すると言われて心配」
「次の採卵までに何かできることはないかな?」
不妊治療をしている方から、このようなご相談をいただくことがあります。
特に30代後半〜40代になると、病院で「卵子の質」という言葉を聞く機会が増えてくると思います。
では、そもそも「卵子の質」とは何なのでしょうか。
そして、鍼灸を取り入れることにはどのような意味があるのでしょうか。
今回は、卵子の質・年齢との関係、そして鍼灸について現在どのような研究が行われているのかを分かりやすく解説します。
そもそも「卵子の質」とは?
不妊治療では、
「卵子の質が大切です」
とよく言われます。
しかし、卵子の質を採卵前に簡単な血液検査で点数化できるわけではありません。
体外受精(IVF)では、採卵した後、
採卵
↓
成熟卵
↓
受精
↓
初期胚
↓
胚盤胞
↓
胚移植
↓
着床・妊娠
という過程を進んでいきます。
そのため実際には、
「成熟した卵子が採れたか」
「正常に受精したか」
「順調に分割したか」
「良好な胚に育ったか」
「胚盤胞まで成長したか」
といった経過を見ながら卵子や胚の状態を考えていくことになります。
つまり不妊治療では、
「何個採れたか」だけではなく、その後どのように育ったか
も非常に大切なのです。
卵子の数と「質」は別に考える
以前の記事でAMHについてお話ししました。
AMHは卵巣予備能を推測するために使われる大切な指標です。
しかし、
AMH=卵子の質
ではありません。
AMHが低いからといって、採れた卵子すべての質が低いという意味ではありません。
逆にAMHが高ければ、すべての卵子が良好という意味でもありません。
だからこそ、
「AMHを上げること」だけを目標にするのではなく、今ある卵子を大切にする
という考え方が大切だと思います。
卵子の質と年齢の関係
卵子について考えるときに大切なのが年齢です。
女性の卵子は年齢とともに変化していきます。
特に30代後半以降になると、卵子の染色体異常の割合が増加することが知られています。
そのため不妊治療では、女性の年齢が治療方針を考えるうえで非常に重要になります。
だからといって、
「年齢が高いから何もできない」
と考える必要はありません。
年齢そのものを変えることはできませんが、
今の身体をより良い状態に整えて、次の採卵に臨む
ことはできます。
当院が不妊鍼灸で大切にしているのも、まさにこの部分です。
鍼灸で卵子の質は良くなる?
ここが一番気になるところだと思います。
近年、体外受精(IVF)を行う女性を対象として、
鍼灸と卵子・受精・胚の状態との関係
を調べる研究が増えています。
特に注目したいのが、2026年に発表された新しいシステマティックレビュー・メタ解析です。
この研究では、体外受精を受ける女性を対象とした18件の研究が解析されました。
その結果、鍼灸を併用したグループでは、
良好胚率
良好卵子率
受精率
など、一部の指標で良好な結果が報告されています。
特に良好胚率については、中程度の確実性を持つエビデンスとして前向きな結果が示されました。
不妊鍼灸を考えるうえで、とても興味深い研究だと思います。
「卵子」だけではなく「胚」まで見ることが大切
この研究で特に注目したいのが、
良好胚率です。
採卵で10個採れたとしても、最終的な目標は「10個採卵すること」ではありません。
成熟卵になり、
受精し、
分割し、
胚盤胞へ育ち、
妊娠につながっていく。
この流れが大切です。
だから当院では、
採卵数だけではなく、受精率・胚盤胞到達・胚の状態まで確認する
ようにしています。
前回の採卵結果を確認しながら、次回の採卵に向けた施術を考えていきます。
卵巣の反応が低い方への鍼灸研究も進んでいる
採卵をしている方の中には、
「刺激しても卵胞がなかなか育たない」
「採卵できる卵子が少ない」
という方もいらっしゃいます。
こうした卵巣反応が低い方(Poor Ovarian Response:POR)に対する鍼灸についても研究されています。
2026年に発表された15件のランダム化比較試験・1,195人を対象としたネットワークメタ解析では、鍼灸や経皮的経穴電気刺激などをIVF前に併用した場合について調べられています。
一部の方法では、
採卵数や成熟卵数などに前向きな結果が報告されました。
卵巣の反応が低い方に対する鍼灸も、現在研究が進められている分野です。
なぜ鍼灸が研究されているの?
では、なぜ卵子や胚と鍼灸との関係が研究されているのでしょうか。
一つのポイントとして考えられているのが、
血流や自律神経への作用です。
卵巣も身体の中にある臓器です。
血液によって酸素や栄養が運ばれています。
鍼刺激による神経系・自律神経系への作用や循環の変化については、さまざまな研究が行われています。
当院でも採卵前には卵巣だけを見るのではなく、
身体全体の血流やコンディションを整える
という考え方で施術しています。
卵子のために「身体全体」を見る
「卵子の質を良くしたい」
という方に対して、お腹だけに鍼をすれば良いとは考えていません。
身体はすべてつながっています。
当院では、
睡眠
冷え
胃腸
月経
疲労
ストレス
食生活
運動
などについても確認します。
例えば睡眠不足で毎日疲れている方であれば、まず身体を休められる状態をつくる。
冷えが強い方なら、身体全体の循環を考える。
胃腸が疲れている方なら、食生活も含めて見直していく。
その方の身体に合わせて施術を組み立てていきます。
採卵前は「睡眠」を大切に
当院が採卵前の患者さんに特に大切にしてほしいと考えているのが、
睡眠です。
仕事をしながら不妊治療を続けている方は、想像以上に身体が疲れています。
通院。
仕事。
家事。
注射。
採血。
そして採卵結果への緊張。
こうした毎日が続きます。
だからこそ、採卵前は、
鍼灸+睡眠+食事+適度な運動
をセットで考えてほしいと思います。
鍼灸だけに頼るのではなく、毎日の生活も含めて身体のコンディションを整えていきましょう。
採卵のどのくらい前から始めればいい?
「卵子のためなら採卵直前に鍼をすればいいですか?」
という質問もいただきます。
当院では採卵予定が分かっている場合、
できるだけ時間に余裕を持って身体づくりを始める
ことをおすすめしています。
卵胞は長い時間をかけて成長していくためです。
そのため、採卵まで2〜3か月程度あるのであれば、
・鍼灸
・睡眠
・食生活
・適度な運動
・疲労管理
・ストレス管理
などを見直す良い期間になります。
最近の研究でも、鍼灸の施術回数や開始時期によって卵子・胚に関する結果が異なる可能性が検討されています。
もちろん、
「もう採卵まで1か月しかない」
という方も、その時点から始めることができます。
今からできることを始める。
これが一番大切です。
卵子だけではなく「精子の質」も忘れずに
そして、良い胚を目指すのであれば、女性側だけを考えるわけにはいきません。
胚は、
卵子+精子
によってできます。
女性が次の採卵に向けて身体を整えているのであれば、男性側も同じタイミングで身体づくりを始めることをおすすめしています。
特に、
・睡眠
・食生活
・適度な運動
・喫煙
・飲酒
・長時間の高温環境
・疲労
・ストレス
などを一緒に見直していきましょう。
良い卵子だけを目指すのではなく、良い受精・良い胚を夫婦二人で目指す。
これが大切です。
卵子の「数」だけでなく、その先を見る
不妊治療をしていると、どうしても数字が気になります。
AMH。
採卵数。
成熟卵数。
受精数。
胚盤胞数。
胚のグレード。
もちろん、すべて大切な情報です。
しかし、最終的な目標は数字を良くすることではありません。
妊娠し、赤ちゃんを迎えることです。
だからこそ当院では、
「何個採れたか」だけではなく「その卵子がその後どう育ったか」
まで大切にしています。
そして次の採卵に向けて、
身体の状態を整える。
睡眠を整える。
食事を見直す。
身体を動かす。
疲労をためない。
鍼灸で身体全体を整える。
一つひとつ積み重ねていきます。
卵子の質を考えるなら「今できること」から
年齢を巻き戻すことはできません。
でも、
今日から身体を整えることはできます。
次の採卵までの時間を、ただ待つ時間にするのではなく、
次の卵子・受精・胚発育に向けて身体を整える時間にする。
これが当院の考える不妊鍼灸です。
鍼灸と卵子・胚の質については、近年も新しい研究が発表されています。
病院での不妊治療を大切にしながら、鍼灸・睡眠・食事・運動などを上手に組み合わせて、次の採卵に向けた身体づくりをしていきましょう。

上尾ゆうしん鍼灸院の子宝(不妊)鍼灸
上尾ゆうしん鍼灸院では、自然妊娠を目指している方から、採卵・体外受精(IVF)・胚移植を行っている方まで、それぞれの治療段階に合わせた鍼灸施術を行っています。
特に採卵を行っている方には、
採卵数だけではなく、成熟卵・受精・胚発育・胚盤胞までの経過
についてもお聞きします。
そのうえで、
睡眠・冷え・胃腸・月経・疲労・ストレス・生活習慣
など身体全体を確認し、一人ひとりに合わせて施術を組み立てていきます。
病院での不妊治療と鍼灸を上手に組み合わせながら、
一日でも早い妊娠と施術卒業を目指して。
「胚盤胞までなかなか育たない」
「次の採卵までに身体を整えたい」
「卵子の質について相談したい」
という方もお気軽にご相談ください。